泣きべそで「ありがと!」
絵本やおもちゃがあったり、うまくするとシールのご褒美がもらえたりして、病院が楽しみな子も中にはいるかも知れません。が、たいていは調子の悪い時に仕方なく来る場所だし、たまに元気なのに連れて来られたと思ったら予防接種だったりして、ほとんどのこどもたちにとって病院は、遊園地やお菓子屋さんのように「行きたい!」と感じる場所ではないでしょう。
それなのに、決していい思いをさせてもらえるとは限らないのに、診察室を出る時には「ありがとう」って言わなきゃいけない雰囲気があるみたい。時には、痛くて泣いているのに、お母さんやお父さんに「ちゃんと言いなさい!」なんて怒られちゃったりして。
そんな場面を目にするたび、ボクは「いいんですよ、泣きたいのにありがたくもないよね~」って、思わず声をかけてしまいます。
万能薬や必殺技を持っているわけではないけれど、積み重ねた経験や、勉強した知識や情報を駆使して、こどもたちが元気でいられるよう、元気になれるよう、お手伝いをすることがボクたちの使命です。そのために、オエッとなって嫌いなノドの診察だったり、痛い注射だったり、まずい薬だったりするかもしれない。「ちょっとだけ許してね」って、心の中でゴメンナサイです。
そんなボクたちの思いを察して、泣きながらでも「ありがとう」と言ってくれるのならうれしいのですが、まあそうもいかないでしょう。今はわけがわからないままでもそう言ってもらう以上は、その言葉に
値する結果につなげられるよう、泣きべそが笑顔に変わるよう、ボクたちもがんばらなくちゃいけないなって思います。そうして、いつかこの気持ちが伝わったらいいな。