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新型コロナウイルス感染症 COVID-19 (17):検査をするといいことがあるのか?

(投稿日: 2020年03月15日)

 相変わらず、テレビでは検査できる/できないの話をしています。国も、検査体制の充実を約束し続けているように思います。

 先日、こんな報道を目にしました。

イタリア、医療現場混乱で感染急増か 全土で移動制限
(日本経済新聞 2020/3/10)

 イタリアの状況が記事の指摘通りだとすると、日本でPCR法による検査の実施対象を厳格に絞ってきたことが、結果的に混乱の発生を抑制し、医療機関を守っているという可能性もあるのかも知れません。実際、「検査ができなくて不安だ」という声がたくさん上がっているいうことはあるかも知れませんが、検査されない方が対応の遅れから重症化した、死に至ったという例が全国で多発しているかというと、そんな兆候はありません。検査の基準として、それなりの重症者は拾い上げているからだと思います。死亡後の検査で陽性が判明、という例も複数出ているようですが、ではもっと早くわかっていたら救命できていたか、というと、そういうわけでもないのではないでしょうか。日本の医療体制では、症状が一定レベル以上に重ければ原因の如何によらずしっかりと対応がなされますし、そもそもコロナの特効薬はないのですから。

 指定病院以外の医療機関は、受診控えにより患者が少なくなっている模様です。それによって生じる時間的、物理的な余裕を、もっと患者が増えた場合への対策の準備に充てられるという意味で、これも大きなプラスです。

 陽性例として入院となった患者さんを診療した経験のある先生のお話しをうかがいました。軽症だったそうです。その経験や最近の知見も踏まえて、その病院では、軽症であれば=全身状態が不良でなければ、コロナかも知れないと考えられたとしても、コロナのPCR法による検査は実施しないと、院内的に取り決めをしているのだそうです。

 一瞬驚きましたが、医学的には確かにそれでよいのだと思います。コロナだからこそ有効という薬や治療法があるわけでもない現状では、陽性でも陰性でも医学的にはやることに違いはありません(※注:2020年3月15日現在、指定感染症であることに伴って、検査陽性の場合に入院等の措置がなされるという意味では、違いはある)。原因が何かによらず、その患者さんのその時点の状態に対応することがまずありきです。重症であれば、コロナであろうとなかろうとその手当てが必要です。軽症であれば、コロナの場合には何も手がないのですから、コロナとして徐々に重症化する可能性に気をつけるようアドバイスをするにしても、むしろコロナ以外の病原体のことも頭に浮かべながら(溶連菌であれば抗菌薬使用のタイミング、インフルエンザであれば抗インフルエンザ薬の使用の必要性の有無、など)、状態の把握に努めて経過を追うことです。

 現在の社会情勢も踏まえると、コロナを疑う要素が大きいほど、検査をする/しないよりも、状態の評価がまず大切であるということだと思います、少なくとも医学的には。軽症である限り、自宅安静を保って接触者を増やさないように努めることが、検査のために外出することよりも優先されると考えます。コロナだったら軽症なうちに早めに陽性とわかった方がよい、、、ということはないと思われます、別に特別な対処法があるわけではないので。

 もう一点。検査は万能、100%正確、ということはあり得ません。検体の採取法とも相まって、①病原体がいるのに陽性と判定されない、②病原体がいないのに陽性と判定される、③病原体はいるだけで何も悪さをしていない(症状が全くない)のに陽性と判定される、、、等々、様々な間違いや誤解の元を生み出すことがあるという、検査法の実力のレベルをきちんと認めてあげなければいけません。検査は絶対正しい、検査だけがコロナかどうか、病気かどうかを決めるのだ、と思い込んでしまうと、足元を救われます。

 ①の場合、偽りの安心感を与えてしまって出歩いてウイルスをばらまく可能性があります。②③の場合、まさしく無意味な対応がなされる、プラス、不要な不安感を本人および周囲にもたらします。

 検査は、そんなに大事なのでしょうか。検査したら何かいいことがあるのでしょうか。上述のとおりで、現状、検査をしようがしまいが医学的には何もやることに変わりはない、ということで、メリットはなし。誤りを生じる可能性を無視して検査することで、誤った対応をもたらしたり不安の元になったりという意味で、デメリットは多分にあり。

 コロナだったらどうしよう、と思うような症状に見舞われた場合には、高熱(の持続)、ひどい咳、息苦しさなど、自宅療養が困難な状況でなければ、医療機関の受診は急を要さないと理解してよいと思います。ただし、基礎疾患や年齢の要素でハイリスクとみなされるべき方々の場合は、受診のタイミングについては敷居を低く考えるべきとは思います。

 イタリアの例に学び、検査の意味を理解して行動することが、医療機関の機能を維持し、重症者への適切な医療体制を確保していくことにつながるということです。

 

 

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