TOMOSO

COVID-19の自宅療養者の電話診療の経験より

2021/8/22 初版
2021/8/24 改訂
2021/8/26 追記
2021/9/29 改訂

 これまで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の小児の患者を中心にそのご家族の感染者と濃厚接触者も含めて、静岡市保健所と連携して静岡市方式として、初回対面診療後、電話診療により対応してきました。その中で心掛けていることやポイントと考えていることなどを列記します。

初期の経験を概要としてまとめた論文が、日本小児科学会雑誌に掲載されました。

 現状、その病状の実際以上に、患者さんとそのご家族は不安を大きくしながら自宅で息をひそめているような状態です。是非とも一人でも多くの患者さん、濃厚接触者の皆さんに、医療と直接つながるチャンスを確保していただきたいと願います。
 ご不明な点があればいつでもご連絡ください。よろしくお願いします。

【全般】

●コロナ専用電話を用意しています。携帯電話(スマホでもちろんよいと思います)で常に持ち歩いています。

●初回と、隔離期間終了後の区切りは、それぞれ対面診察としています。

⇒ かかりつけではない初対面の患者さん、そのご家族であっても、一度まず会って、マスクを着けた形でもお話を直接にしておくことで、その後電話診療の中でもスムーズなコミュニケーションが保てるように感じています。

●初回対面診察の際に患者さんに電話番号をお伝えし、日々の電話診療はこの番号で実施するということを説明します。また、困ったらいつでも電話してきてくださいねとお話しします。

⇒ それで深夜にかかってきたり、とんでもない頻度でかかってきたり、ということは今までありません。毎日1-2回、状態をうかがうために必ず電話でやり取りしてアドバイスをしていること、「いつでも相談できる」と思えること、それらによる安心感の確保が大きいのではないかと思います。

●処方:初回対面診療時には、解熱鎮痛剤(カロナール)、湿性咳嗽がある場合に去痰剤、程度です。経過中の状況によって、整腸剤、止痢剤、気管支拡張剤、デキサメサゾンの処方をして病院まで取りに来ていただく、あるいは院外処方箋を発行してかかりつけ薬局に処理していただくようにしています。

⇒ 解熱鎮痛剤は、初診時に症状がなくても経過の中で必要となることもあり、後であわてないように、家に予備があるかどうかを確認しています。その服用は頓用とし、「6時間以上の間隔を空けて一日2回まで」を原則として、我慢しきれないほど辛い時、ここぞという時に服用するように説明しています。定期の服用にすると発熱や痛みの経過が捉えにくくなることと、回数をある程度制限しないとコロナを取り巻く社会状況もあって不安が掻き立てられるのでしょう、薬に依存したような状態になる方が少なくないためです。抗菌薬は、予防投与は不要、二次的に後から必要となった方も自宅療養の範囲では皆無です。

●毎日の電話での聞き取り項目は、体温、酸素飽和度、心拍数、症状(気になった症状の変化の有無、新出症状の有無を中心に)、前日までに気にかかった点の確認、そしてお悩み相談、困りごと相談。

⇒この相談の部分を丁寧にこなしていくこと、「その他全般に困っていることなどありませんか?」と声掛けをすることで、短い会話であっても事務的にならないで済んでいるように思われ、一番重要と感じています。

●よくある症状:発熱、咳、痰、頭痛、倦怠感、関節痛、咽頭痛、下痢、食欲不振。味覚・嗅覚異常は保護者世代の5割程度の印象です。嘔吐はまれ。発疹は経験がありません。観察期間中の脱毛も経験ありません。

●「電話で何がわかる?」という捉え方もあるかもしれませんが、声の調子:ハリ、力強さ、テンポ、スムーズさ、とぎれとぎれでないか、明暗、、、などとその推移は、非常に大きな生体情報です。

●小児を中心としてその保護者までの若い世代であれば、大半の患者さんが数日のカゼ程度の症状の経過で改善します。その後の全10日間の隔離期間、元気であるが故、閉じ込められていることのストレスをより感じるようになります。体操したり、家族でお話をしたりするなどしてストレスを発散しながら過ごすようアドバイスをしています。

●誰からかかった、誰にうつしてしまった、ということを気にする方が少なくありません。それらは療養中、精神的に全くプラスに働きませんので、規定の期間を心身ともに健康で過ごすことに集中しましょう、と呼び掛けるようにしています。

●陽性者の隔離期間を同居して自宅療養された濃厚接触者は、規定上、さらに2週間の健康観察期間となります。陽性者は隔離期間明けに一度来院していただき、終了診察としていますが、濃厚接触者はこのタイミングで一度PCR検査を実施して、同居している間に感染していないかを確認しています。

●基本的に保険診療として算定。陽性者の自己負担は原則ゼロ。濃厚接触者については、特に成人の場合は健康観察期間を「いつ発症するか、いつ感染者になるか」とびくびくしながら過ごし、不安に苛まれて心身を消耗していて患者そのものです。コロナの疑い病名で保険診療としています。患者さんの診療の求めがあってそれに対応している、というコメントをつけています。

⇒5月まで支払基金から何のお咎めもありませんでしたが、6月以降、急に返戻がなされるようになりました。昨今の自宅療養者の増加と、患者とご家族の不安な状況が繰り返し伝えられている状況です。患者さんやご家族とこれまでやり取りをしてきて、自宅療養における不安な気持ち、医療とコンタクトができなかった間の絶望的な心持ちは、患者さんの側より多くの訴えもあって当初より痛感しておりました。「診療をしてもらえた」と泣き出す保護者も少なくありません。今後、全国で自宅療養者への医療の対応が増えていかざるを得ないと思います。基金への対応を丁寧に根気よく続け、理解を得ていくようにと思います。

●かかった医療費の清算は、すべての経過が一段落したらまとめて、ということにしています。感染者は公費負担で原則ゼロですので、総額と言っても大した数字にはならないようです。

●生命保険(契約の内容にもよりますが、自宅療養は入院として扱われる会社が多いようです)、国保の場合の傷病手当などの書類にも、こちらから積極的に声掛けをして対応しています。

【小児】

●親が不安になるほど強い症状(けいれんする、吐き続ける、顔色が悪くなるほどの呼吸状態の悪化)の子はこれまで経験がありません。

●酸素飽和度が低下する例の経験も今までありません。パルスオキシメーターの貸し出しができなくても、小児に関しては過度に気にしなくてもよいと思います。

⇒こどもに関しては、細かい数字の以前に、様子がおかしいと、そばにいて普段以上に常に観察をしている保護者の観察が一番正確であると思います。

●デルタ株が流行してから、不顕性感染の子の割合が低下し、症状がある子が増えました。しかし、やはりカゼ症状が数日程度(多くは2-3日)続くというケースです。コロナを特別視せず、状態に応じて適切に対応するよう、先手先手でアドバイスをしています。

●以前は味覚や嗅覚の異常を訴える子はほとんどなかったのですが、やはりデルタ株が流行してから散見されるようになりました。しかし、基本的には皆さん回復していますので、テレビでよく扱われるような「後遺症」のイメージに過度に振り回されることのないようにとお伝えしています。

●登校の再開が近づいたら、本人、保護者、学校側と、長めに休んでいた理由の、友達への説明の仕方をすり合わせしておくようお伝えしています。

⇒小学校高学年以上ではしばしば問題となるようです。本当は療養をしたことについて噓をついたり隠したり、、、ということをしなくてはならないというのはおかしな話ですが、現状の社会状況では仕方ないですね。

【成人】

●発症後5日あたりの症状の状態により、デカドロンの処方、もしくは成人の先生方への橋渡しを積極的に考慮しています。発熱の持続よりも、酸素飽和度が上がりきらなかったり、電話口の声の弱々しさが気にかかる場合は要注意と考えています。

●男性でしかも小児科医の僕に、全員が申告、相談しているわけではないと思いますが、お母様で生理が止まらない、という方がおられます。凝固系に影響するのかなと思っています。これも、普段の生理期間よりも長めというだけで、過多出血ということではないようです。皆さん、やがて治まっています。

※転載フリーです!

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