新型コロナウイルスとマスクに関する一小児科医としての考え
(投稿日: 2020年06月21日)
「新しい生活様式」が叫ばれています。しかし、小児科医としては、こども達の様子を見るにつけ、いろいろと思うところがあります。
⇒ コロナとこどものマスク/フェイスシールドに関する考えとして、改訂版を掲載しています。
◆新型コロナウイルスについて
*世界的に、こどもは感染しにくい、重症化しにくい、感染しても周囲に広げにくい、という特徴があることがわかっています。
*高齢者や基礎疾患のある者、喫煙者が、重症化しやすいこともわかっています。
*ニュースやネットを見ていると、かかったら最後、全員が死の恐怖におびえなくてはいけないかのように錯覚してしまいます。しかし、感染者と言われる方々の少なくとも8割以上がカゼ程度の軽症かもしくは無症状であり、集中治療を要する重症者や死に至るケースは全体からするとごくまれです。テレビやネットの大騒ぎに振り回されないことが大切です。
◎年齢や健康状態に関係なく無差別に人々の命を奪っていく“殺人ウイルス”ではないことを、正しく認識しましょう。
◆マスクについて
①意義・意味
*そもそもは、咳をしている人が、バイ菌を含む場合もある飛沫(ひまつ)を周囲にまき散らさないようにするための、エチケットとしての役割です。
*近年では、スギ花粉症のシーズンに、花粉をブロックしたり、クシャミやハナミズを覆ったりする役割も期待されるようになりました。
*通常の紙マスクの繊維の目は粗く、飛沫やハナミズや花粉がそのまま通り抜けることはありませんが、ウイルスはとても小さいため、自由に通過してしまいます。医療用の特殊なマスクを除いては、材質を問わず、マスクの脇からウイルスが出入りすることも可能です。
②着用のメリット
*①で述べたマスクの特性から、マスクをしていれば完璧に感染しない、させないということは期待できません。飛沫に含まれたウイルスをまき散らさなくてすむ、あるいは直接に吸い込まなくてすむ、という程度の効果と考えられます。
③着用のデメリット
1)暑苦しい
⇒ 特に夏場は、熱中症のリスクを高める危険性もあります。
2)息苦しい
⇒ 汗で湿り気を帯びるとさらに呼吸がしづらくなる危険性があります。
3)顔色が見えない
⇒ こどもの健康状態が観察しにくくなります。
4)表情が見えない
⇒ こども同士の表情によるコミュニケーションが乏しくなります。またこどもは、年長者(保護者、家族、保育士等)の表情から感情や善悪の判断、様々な思いを学んでいきます。お互いにマスクをすることで、こうした表情によって伝え合うものを失ってしまいます。特に言葉が発達する前の乳児は、親の表情を見て豊かな感情をはぐくんでいくところ、親がマスクをしていることで、今後どんな感情の持ち主に育っていくのか、まったく予測がつきません。
5)口の動きが見えない
⇒ 言葉の発達段階にある年齢では、年長者の口の動き方を見て、知らず知らずのうちに発語の仕方を学んでいきます。この機会がマスクによって失われます。聴覚障害のある方は、口の動きを見て話しの内容を理解します。マスクはこの情報を遮断してしまいます。
6)においがわかりにくい
⇒ マスクをしっかり着用していればしているほど、においが感じにくくなります。様々なにおいを感じて感情を豊かにする面もありますし、悪臭や刺激臭を感じることで自分を守る行動にもつなげていきます。マスクは、この大事な五感の一つ、嗅覚を鈍らせてしまいます。仮ににおいが鈍らないのであれば、それはマスクの材質が悪いか、付け方が悪いことを意味しており、そもそも感染対策の役割を果たしていません。
7)肌が荒れる
⇒ 材質に過敏だったりこすれたりして、肌が荒れる場合があります。
★まとめ
コロナが“殺人ウイルス”ではなく、特にこどもを標的にはしていないことと、マスクの①意義・意味と②メリットの乏しさ、それに引き換え③デメリットが多大であることを考えれば、少なくとも「常時マスク着用」することは、こどもだけでなく大人にも不可欠ではありません。むしろ弊害が大きいでしょう。マスクは、コロナに限らず様々な感染症の流行が明らかである時に、適切に使用することがポイントです。6月下旬の静岡市の現状は、それにはあたりません。緊急事態宣言が解除されて流行が一段落の今だからこそ、こどもも大人も、お互いにイキイキとした表情で接し合うことが大切かつ必要です。マスクをしていない人を無条件ににらみつける、そんな社会にしてはいけません。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」。コロナだけに集中した過剰な対策は、必ずその弊害を社会に、こども達にもたらしますし、コロナ以外のことで足元を救われることにもなりかねません。コロナは注意していかなくてはいけない新しい感染症ではありますが、こども達の成長や未来の発展にまでブレーキをかけていかなくてはいけないようなモンスターではないと、一小児科医としては考えます。
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