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コロナは恐ろしい感染症か?

 本年1月に、「中国の武漢というところで怪しげな感染症が新たに発生したらしい」という情報が我が国にも届きました。新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2: SARS-
CoV-2)による感染症(COVID-19)として、中国人観光客に関連した感染者の報道が発端となって、2月いっぱいは横浜港に停泊したクルーズ船の騒ぎに明け暮れました。3月以降、市中での感染の広がりと海外からの帰国者における感染者の発見、4月に緊急事態宣言、5月にいったん感染者数が減って自粛の解除、6月に首都圏を中心とする流行の再燃、そして7月に静岡県内での感染者数の急増、です。こうしてみると、あっという間の半年でした。
 COVID-19は、メディアや政治家や一部の国民が大騒ぎするように、かかってはならない恐ろしい感染症なのでしょうか? 2020年7月末現在、私はCOVID-19と診断された方の診療の経験はありません。海外の状況はさておき、国内のここまでの実情と、私自身の立場を踏まえた上で、本稿では“COVID-19”、“新しい生活様式”、“最悪の事態”という3つのキーワードで考えてみたいと思います。

◆COVID-19:恐ろしい感染症なのか?

 ここまでの半年間で、我が国のみならず世界中が経験したことからわかっていること、よく伝えられていることを列記します。
①カゼのような症状で始まり、一部で肺炎となるなど重症化して、死に至ることもある
②高齢者や基礎疾患のある人、喫煙者で重症化する率が高い
③感染しても症状が出ない人がいる
④発症の前から感染させることがある
⑤手軽に実施できる検査法がなかなかない
⑥特効薬はない
⑦ワクチンはない
 ①から⑦まで、なんだか恐ろしい響きがありますし、メディアも繰り返し強調して伝えます。しかし、冷静に考えてみましょう。これらはすべて、我々が日々接してきたカゼの特長です。
①:「カゼをこじらせないように気をつけましょう」、当たり前のことです。重症化する例、死亡する例は、年齢によっても割合が異なることは明らかですが、総じて、軽症者・無症状者が8割以上とされます。検査件数が増加するにつれて無症状の例が次々と見つかってきていることから、実際の感染者数は現在言われているよりもはるかに多く、したがって重症化率や死亡率は現在の情報よりももっともっと低いものと思われます。
②:カゼをこじらせやすい、こじらせると厄介なことになる、典型的なハイリスクの方々です。
③:それを、不顕性感染と称します。様々なカゼ、ウイルス感染症で知られていることであり、COVID-19の専売特許ではありません。
④:ウイルス感染症では珍しい話ではなく、例えば伝染性紅斑、通称リンゴ病が有名です。「こどもの真っ赤なほっぺに気づいた時はもう皆さんに感染させた後で、病気が終わる徴候ですよ」とは、小児科で親御さんに毎度説明する常套句です。リンゴ病なら軽くすむからよいだろう、、、そんなことはありません。大人がかかると頭痛や関節痛、血液検査で血球系への影響が大きく、とても軽いカゼではすまないことがしばしばです。妊娠中の場合は、胎児水腫を来して赤ちゃんの生命に関わることもあります。決して軽視できる感染症ではありません。しかし、発症前から感染力があるからと、リンゴ病を恐ろしい感染症と位置付けて厳格な予防対策をとるようなことはこれまでありませんでした。
⑤:インフルエンザや溶連菌など、今では迅速診断キットなるものがあって手軽に検査できますが、そういう感染症は数えるほどです。あまたあるカゼの種類の中で、病原体が診療の中で検査によって判明することがそもそも稀です。
⑥⑦:⑤と同様、特効薬やワクチンのあるカゼがむしろ稀です。
 COVID-19は、こどもや若者の患者はそもそも少なく、重症化することも少ないとされてきました。最近では、感染した家族の濃厚接触者の洗い出しの中で見つかる無症状のこどもや若者の感染例が増加してきています。年長者と同様に感染するが、不顕性感染が多く、トータルで重症化する率が低い、ということなのかも知れません。よく、こどもがかかるはずのカゼに、大人になってからかかると厄介であると言われます。COVID-19はまさにその典型例なのかも知れません。
 ここまでではっきりと言えることは、COVID-19は、健康なこどもや若者の命を無差別に奪っていくような“殺人ウイルス”では決してない!ということです。
 結局、恐ろしい気がしているだけではないでしょうか。そうさせた大きな要因は、メディアの報道です。目立つこと(死亡、有名人の罹患、新しい治療法や薬剤など)ばかりをこれでもかこれでもかと繰り返し伝え、「過去最高」、「連続○日」など、煽る見出しを追求し、受け手を安心させるよりも不安を掻き立てる発言をするコメンテイターが起用され続けてきました。現在、多くの国民が抱いている「コロナは恐ろしい」、「かかってはならない病気だ」というイメージは、大方メディアによって形成されたものと言えましょう。メディアに踊らされるのはやめにして、誰もがかかる可能性のあるカゼである、という捉え方に、そろそろ切り替えていくべきです。

◆新しい生活様式:本当に常に必要なのか?

 外出しても、マスクをしていない人を見つけることが困難になってきました。消毒用アルコールの入った容器がいたる所に置かれています。お店や病院の受付でアクリル板やビニルシートが設置されているのが当たり前の光景になっています。テレビで出演者が間隔を空けて座ったりモニター画面での登場だったりの様子も見慣れてきました。
 これから先、我々はこうした生活をしていかなければ“いけない”のでしょうか? マスクを例にとって考えてみましょう。
1)意義・意味
 そもそもは、咳をしている人が、バイ菌を含む場合もある飛沫(ひまつ)を周囲にまき散らさないようにするための、エチケットとしての役割です。近年では、スギ花粉症のシーズンに、花粉をブロックしたり、クシャミや鼻水を覆ったりする役割も期待されるようになりました。通常の紙マスクの繊維や布マスクの目は粗く、飛沫や鼻水や花粉がそのまま通り抜けることはありませんが、ウイルスはとても小さいため通過できてしまいます。医療用の特殊なマスクを除いては、材質を問わず、マスクの脇からウイルスが出入りすることも可能です。
2)着用のメリット
 1)で述べたマスクの特性から、マスクをしていれば完全に感染を予防できる/感染させなくてすむ、ということは期待できません。飛沫(とそれに含まれたウイルス)をまき散らさなくてすむ、あるいは直接には吸い込まなくてすむ、という程度の効果と考えられます。その前に、咳やクシャミ、鼻水といった症状が明らかにあるような体調であれば、マスクをしたとしても人と接触する場に出るべきでないことは言うまでもありません。
3)着用のデメリット
A)暑苦しい
 ⇒特に夏場は、熱中症のリスクを高める危険性もあります。
B)息苦しい
 ⇒着用するだけでも呼吸に負担がかかる上、汗で湿り気を帯びるとさらに呼吸がしづらくなる危険性があります。
C)顔色が見えない
 ⇒健康状態が観察しにくくなります。
D)表情が見えない
 ⇒表情によるコミュニケーションの表出が乏しくなります。またこどもは、大人(保護者、家族、保育士、教師等)やこども同士の表情から感情や善悪の判断、様々な思いを学んでいきます。お互いにマスクをすることで、表情によって伝え合うこうしたものを失ってしまいます。特に言葉が発達する前の乳児は、親の表情を見て豊かな感情をはぐくんでいくところ、親がマスクをしていることで、今後どんな感情の持ち主に育っていくのか、まったく予測がつきません。
E)口の動きが見えない
 ⇒言葉の発達段階にある年齢では、年長者の口の動き方を見て、知らず知らずのうちに発語の仕方を学んでいきます。この機会がマスクによって失われます。聴覚障害のある方は、口の動きを見て話しの内容を理解します。マスクはこの情報を遮断してしまいます。
F)においがわかりにくい
 ⇒マスクをしっかり着用していればしているほど、においを感じにくくなります。様々なにおいによって感情を豊かにする面もありますし、悪臭や刺激臭を感じることで自分を守る行動にもつなげていきます。マスクは、この大事な五感の一つ、嗅覚を鈍らせてしまいます。仮ににおいが鈍らないのであれば、それはマスクの材質が悪いか、付け方が悪いことを意味しており、そもそも感染対策の役割を果たしていません。
G)肌が荒れる
 ⇒材質に過敏だったりこすれたりして、肌が荒れる場合があります。
 前項で述べた通りコロナが“殺人ウイルス”ではなく、マスクに求められているものが1)本来の意義・意味に適合していないこと、2)メリットが期待されるほどのものではないこと、それに引き換え3)デメリットが多大であって危険性をも伴う場合もあることを考えれば、少なくともマスクを“常時着用”することは不可欠ではありません。むしろデメリットの大きさにこそ目を向けるべきでしょう。
 マスクは、COVID-19に限らず様々な感染症の流行が明らかである時に、適切に使用することがポイントです。マスクをしていない人を無条件ににらみつける、そんな社会にしてはいけません。
 マスクを筆頭に、新しい生活様式として提案されている事項は、いかにしてウイルスとの接触を遮断するかということで、結果的に人同士を遠ざけ、コミュニケーションを希薄にさせる施策の数々です。ウイルス対策だけに目を奪われ、それらがもたらすデメリットをイメージできなければ、人と社会に大きな負の影響をもたらすことになるでしょう。
 もう一点、新しい生活様式の中に、明らかに有害である喫煙について言及されていないことは、大きな不備であると言わざるを得ません。
コロナ時代の新しい生活様式と言いますけれども、COVID-19だけが感染症ではありません。COVID-19さえ防げば健康が保証されるということでもありません。我々はこれまでも様々な感染症とお付き合いをしてきました。なぜ今急に、COVID-19だけを特別扱いし、“新しい生活様式”という制限を自らに課さなくてはいけないのか、その理由が見つけられません。

◆最悪の事態:本当に恐ろしいものは?

 COVID-19は恐ろしい感染症であるという印象が定着し、かかってなるものかという雰囲気が社会全体を覆っています。
 医療の現場でも、COVID-19が疑われる患者さん、あるいは診断がついた患者さんの診療をする際には、防護服を身にまとって、場所も他の患者さんやスタッフとは隔離した状態で、万全の態勢をとることになります。
なぜCOVID-19をこんな風に扱うようになったのでしょうか。医療的には、感染症法に基づいて指定感染症(二類感染症相当)に指定されているからです。なぜ指定感染症になったのでしょうか。新しく、未知の病原体による感染症だったからでしょう。
 では、約半年たった今も、新しく、未知の病原体による感染症で、恐ろしいままでしょうか。いえいえ、そんなことはありません。データの積み重ねもあっていろいろなことが明らかになってきており、それに伴ってとるべき対策、とることのできる対策が増えてきています。
 何より、PCR検査の体制が強化され、実施する対象も拡大されて、検査陽性となる方々の数が増えている一方で、重症者、死亡者がそれに伴って増加はしていないという事実があります。
 結局もう、何が恐ろしくて様々な対策をとっているのか、わからなくなってしまっているのではないでしょうか。マスクを常に着用している方々が恐れているのは、メディアによって植え付けられた誤ったウイルスのイメージか、あるいはウイルスではなくて人の目、社会の目なのではないでしょうか。
 その結果、残念ながら差別と称すべき行為がいたるところで見られるようになってきています。感染した人を批難する、謝罪させる、患者を診療する病院には近寄らない、そこの職員のタクシー乗車を拒否する、職員のこどもが登園を控えるように求められる、他県から来た人を避ける、他県に出かける人を犯罪者のような目で見る、などなど。本当に恐ろしいのは、そんな“差別”です。身を守るという大義名分で差別が正当化され、お互いに疑心暗鬼になって誰も信じられなくなる、そんな社会になってしまうことは、何よりも恐ろしいことであると思います。
 COVID-19は、結局のところ、どこからどう見てもカゼです。「ただの~」という形容まではあえてしませんけれども。「感染防止策を何も行わなかった場合、~約42万人が死亡する」との最悪の事態の推計が4月頃に発表されました。しかしながら、カゼごときで人が人を差別する、疑い合い、信頼し合わなくなる、、、それこそが“最悪の事態”ではないでしょうか。

 小児科診療の現場では、受診控えを含む様々な要因によると思われますが、患者の減少が顕著です。現在のCOVID-19対策の成果であるのか、感染症の流行が目立たないことも事実です。その一方で、長期休校の影響でリズムを崩したことが原因と推察される心の問題を抱えた児の受診が後を絶ちません。大人の領域でも、社会的なストレスの影響でしょうか、帯状疱疹の患者が増えているという情報も耳にします。疾患としてのCOVID-19のインパクトをはるかに上回る健康上の問題、そして教育や経済など、社会のいたるところで様々な問題がすでに噴出しています。
 本来であれば、今頃は半世紀ぶりの東京オリンピックで日本中、いや世界中が活気に満ち溢れているはずでした。思わぬ来訪者に引っ掻き回されてきた半年間でしたが、医療の専門家である我々こそが足下を見つめ、新しい生活様式を求めるというよりも元の日常を早く取り戻せるように、信頼し合い、手をとり合い、協力し合って歩んでいくことが、今、大切であると思います。

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