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新型コロナウイルス感染症 COVID-19 (35):ワクチンが生まれた理由

(投稿日: 2020年04月02日)

 かつて、人類を苦しめた天然痘という病気があって、それを何とかしたいと思った多くの人々がいて、たくさんの犠牲、長い時間、途方もない労力が費やされた結果、我々はワクチンという武器を手にしました。イギリスの開業医、エドワード・ジェンナーによる業績で、最初の成功例の接種は1796年のこと。その2年後に成果を世に発表したそうです。

 その後、やはり人類を長く苦しめてきた様々な感染症に対して、様々なワクチンが開発されてきました。いろいろな考え方の人がいますけれども、ワクチンが今日の感染症のコントロールのために多大なる貢献を積み重ねてきたことは疑う余地がありません。

 いろいろな考え方はあって当然です。そもそもワクチンを用いる予防接種とは、基本的に健康なこども、人に、鋭利な刃物や針を刺して、あるいは特別なものを飲ませて、一時的にも不健康な状態に陥らせることによって成果を得ようとする特殊な行為です。「なんと野蛮な、、、」と捉えられて当然の要素は多々あります。しかし、その特殊な行為によって、人類は感染症を乗り越える術を手にしたわけです。

 そうまでしてワクチンを求めたのは、乗り越えなくてはいけない、人類を苦しめてきた感染症の存在が故です。乗り越える必要もない感染症、例えば鼻水が出るだけでみんな確実に治るようなカゼや、命を落とすことは決してない水イボなど、わざわざ針を刺すというリスクを冒してまで、あるいは開発のために大金を投じてまで、とは考えないわけです。そうしないと自分が、家族が、地域が、社会が、世界が、どうかなってしまうのでそうならないように、、、ということです。

 で、現在のコロナです。世界を巻き込んでのこの惨状は、やはりワクチンの登場が渇望されるところなのでしょう。ジェンナーの時代までの世界、中世の時代は、何とかするための手段を、藁にもすがる思いであれこれ試していたのだと想像します。今の人類が、ちょうどそんな雰囲気なのではないかなと。

 コロナ対策のワクチンは、やがてできるのかなと思います。系統が違いますが、動物コロナ用にはワクチンが以前よりあるそうですし。ただし、ワクチンであれば必ず効くというわけではないので、慎重に、、、です。種痘のように天然痘を根絶させる威力のものもあれば、インフルエンザのようにいまだに効く効かないの論争が絶えない種類のものもあります。

 社会の雰囲気は天然痘の時代とコロナの今と、似通っているのかもしれません。けれども、個人的には、決定的な違いを感じる部分があります。それは、天然痘が最大で50%ともされる致死率で文字通り”殺人ウイルス”が原因であったことに対して、現在のコロナは8割以上が軽症とされていて全く”殺人ウイルス”なんかではない点です。

 現状に対して、よく効いて安全なワクチンができたとしたら、もたらされる最大のモノは”安心感”であって、どれほど死亡率や重症化率を下げられるのか、という気はします。

 また、ワクチン開発の原動力が、ジェンナー医師の時代と違って、「命を救いたい」から「ビジネスチャンスだ!」にすり替わっていないことも祈るところです。

<参考>吉村昭 著 『雪の花』

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