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新型コロナウイルス感染症 COVID-19 (70):検査の道のりと診療

(投稿日: 2020年05月07日)

 コロナ騒動で一躍有名になった”PCR法”。「話をよく聴いて、よく観察/診察して、必要に応じて実施する検査の結果も参考にして、総合的に判断して患者を診療する」という当たり前のプロセスの一部でしかない検査、その中のまた一つでしかないPCR法が、どうしてこうもコロナ対策の中心のように仕立て上げられ、また思い込まれて、喧々諤々、世界中の論争の中心になってしまっているのか。

 立場ある方々からも、いろいろな声が挙がっているようです。

 静岡市も、検体採取センターを開設すると発表しました。

 あくまで”検体採取”を目的としたもので、ドライブスルー方式はその作業の方法を表現したもの。決して、スルーする出口で検査結果まで得られるわけではありません。検体採取の施設を集約化させることにより、効率を若干(数倍、にはとてもならない)上げることと、マンパワーおよび物品(手袋、マスク、ガウン等)の無駄を少なくすること、それが目的です。実際にこなせる検査数の上限は変わりませんので、検査を受けられる人数がすごくたくさん増えるわけではありません。

 検査に関して、一般市民の目線では、ざっとこんな感じでしょうか。

*検査をして白黒つけた方がよい
*検査をすることが安心感につながる
*検査をなかなかしようとしないのは何か意図があるのではないか
*検査をしてもらえない間に重症化した例が報じられているではないか

 新型コロナによる感染症の特長はいろいろありますが、診療に関わる部分では、次のような事項が挙げられます。

〇8割以上が軽症で、1-2割が重症
〇基礎疾患があったり高齢者であったりすると、こじらせて重症化する確率が高まる
〇治療薬はない:病院で何をするかと言えば、点滴をしたり酸素を投与したりといった下支えのみ
〇ワクチンがない
〇現状、頼れる検査法はPCR法のみ:しかし、本物の感染者を正しく陽性と判定する実力はせいぜい7割程度

 恐ろしい感染症に聞こえますが、いわゆるカゼのほとんどの原因ウイルスに当てはまることです。コロナだけを今のようにことさらに特別扱いすることがそもそもおかしいと、僕は思っています。が、新しいウイルスということでまだまだ分からないことがある以上、今は仕方ないとも思います。

 その上で、検査については、次のように考えられます。

*コロナ以外の病気もあるわけで、検査をしようがしまいが、その結果が陽性であろうが陰性であろうが、重症であれば必要な治療はなされる
*検査をして陽性であったとして、コロナ用の特別な治療があるわけでもないので、陰性の場合とやることは何も変わらない
*検査の限界で、特に軽症の方に検査を実施して、本当は陽性であるのに陰性と判定してしまった場合に、単なるぬか喜びになってしまう
*実際にPCR法の検査をできる数に限界があって、精度を落とせばもう少し増やせるかもしれないがそれを許さないのもまた日本人

 PCR法の検査は、実施できる数にどうしても限界があります。増やそうと思って簡単に増やせるような、お手軽な検査ではない、繊細で熟練を要するということも、一般に理解していただきたいところです。

新型コロナウイルスのPCR検査件数が少ない理由と実情

 検査検査と簡単に言われますが、それにたずさわるのは人間であり、時間をかけて正確に判定しようという腕と情熱があって初めて得られる結果です。ボタンを押すとすぐ様結果をはじき出してくれるようなシステムではありません。そこは、全国民が理解をする必要があると思います。

 また、「検査数を飛躍的に増やせば流行を抑えられる」という方々が後を絶ちませんが、これも論理の飛躍があります。現に、叩かれ、批判を浴び続けている日本の検査体制が大きく変わらないうちに、国内の流行は峠を越しつつあります。また、原因不明の死亡者が続出、、、という事態にも陥っていません。

 「話をよく聴いて、よく観察/診察して、必要に応じて実施する検査の結果も参考にして、総合的に判断して患者を診療する」。検査さえすれば、、、という幻想には目もくれず、粛々とこの作業を繰り返していくのみです。

※姉妹編:『新型コロナウイルス感染症 COVID-19 (17):検査をするといいことがあるのか?』(2020/3/15)

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